「議事録の要約くらいなら」と思って、社内資料や顧客とのやり取りをそのままChatGPTやClaudeに貼り付けたことはないでしょうか。忙しい業務の合間ほど、この「くらいなら」が積み重なっていきます。
結論から言うと、対策は難しくありません。(1)入力してよい情報とNGな情報の線引きを先に決めておく、(2)いま使っているサービスの「学習利用」設定を一度確認する、(3)それを1枚のルールにしてチームで共有する。この3つを順番にやるだけで、情報漏えいのリスクを大きく下げることができます。
S.Lineでも、SNS運用代行やコンテンツ制作に関わる40名を超えるスタッフが日常的にChatGPTやClaudeなどの生成AIを使っています。人数が増えるほど「誰が何を入力しているか」を把握しきれなくなるからこそ、個人の感覚に任せず、最初にルールを言葉にしておくことの重要性を感じています。
この記事では、まず生成AIに入力してはいけない情報の考え方を整理し、そのうえでChatGPT(OpenAI)・Claude(Anthropic)・Gemini(Google)それぞれの公式ページで確認できる学習利用・オプトアウトの設定を紹介します。最後に、社内ルールに落とし込むためのチェック項目までまとめました。なお本記事の記載は2026年9月14日時点で取得した各公式ページの内容であり、各社の仕様は変更される可能性があるため、実際に設定する際はその時点の公式ページをご確認ください。
生成AIに「入力してはいけない情報」を最初に決めておく理由
生成AIへの入力とは、チャット画面のプロンプトだけでなく、貼り付けたファイルや音声入力の内容も含めて、AIサービスの運営会社のサーバーへ送信される情報全般を指す。
個人情報保護委員会は2023年6月2日に公表した「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」の中で、一般の利用者に向けて「生成AIサービスでは、入力された個人情報が、生成AIの機械学習に利用されることがあり、他の情報と統計的に結びついた上で、また、正確又は不正確な内容で、生成AIサービスから出力されるリスクがある」と説明しています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF)
つまり、入力した情報がその場でチャット画面に返ってくるだけでなく、AIモデルの学習データとして取り込まれ、まったく別の利用者への回答の中に、形を変えて出てくる可能性があるということです。この「入力した情報が自分の手を離れて別の場所で使われるかもしれない」という前提を最初に共有できているかどうかで、その後のルール作りの精度が変わってきます。
とはいえ、すべての情報を一律に禁止すると生成AIの利便性が失われてしまいます。生成AIの危険性とは?初心者が知るべき9つの注意点と安全な使い方でも触れているように、リスクの種類を理解したうえで「何を避け、何は使ってよいか」を線引きすることが現実的な対策になります。
個人情報保護委員会が示す注意点と「要配慮個人情報」
要配慮個人情報とは、人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴など、本人に対する不当な差別や偏見が生じないよう取り扱いに特に配慮を要する個人情報を指す用語である。
個人情報保護委員会は同じ注意喚起の中で、個人情報取扱事業者に向けて「個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合には、特定された当該個人情報の利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確認すること」、また「あらかじめ本人の同意を得ることなく生成AIサービスに個人データを含むプロンプトを入力し、当該個人データが当該プロンプトに対する応答結果の出力以外の目的で取り扱われる場合、当該個人情報取扱事業者は個人情報保護法の規定に違反することとなる可能性がある」と述べています。個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(PDF)
同委員会は同じ日、ChatGPTを提供するOpenAI, L.L.C.及びOpenAI OpCo, LLCに対しても、個人情報保護法第147条に基づき「あらかじめ本人の同意を得ないで、ChatGPTの利用者及び利用者以外の者を本人とする要配慮個人情報を取得しないこと」などを求める注意喚起を行ったと公表しています。個人情報保護委員会「OpenAIに対する注意喚起の概要」(PDF)
ここで重要なのは、個人情報を入力すること自体が一律に禁止されているわけではなく、「利用目的の範囲内か」「本人の同意なく目的外に使われる状態になっていないか」が判断のポイントになっている点です。この判断は個別の事実関係によって変わるため、自社のケースが法令に抵触するかどうかを最終的に判断する場合は、同委員会の公表資料や弁護士など専門家への確認をおすすめします。
「学習利用」とは何か、なぜ確認が必要なのか
学習利用とは、利用者が入力したプロンプトやアップロードしたファイルの内容を、AIモデルの追加学習(ファインチューニングを含む)のデータとして使うことを指す。
多くの生成AIサービスは、利用者との会話データを使ってモデルの精度を高める仕組みを持っています。問題は、その学習利用が「デフォルトでオンになっているか」「利用者が明示的に許可した場合だけオンになるか」がサービスやプラン(無料版・有料個人向け・法人向けなど)によって異なることです。
この設定を確認しないまま業務利用を広げてしまうと、意図せず機密情報が学習データに取り込まれる可能性があります。逆に言えば、学習利用の設定を一度確認して自社の方針に合わせておけば、日々の業務でどこまで安心して使えるかの土台ができます。次の3つの章で、ChatGPT・Claude・Geminiそれぞれの公式ページで確認できる学習利用の扱いを整理します。
ChatGPT(OpenAI)の学習利用とオプトアウト設定
OpenAIの公式ヘルプセンターによると、ChatGPTやCodexなど個人向けサービスでは既定で会話内容がモデル学習に使われる可能性があり、設定でオプトアウトできるとされている。
OpenAIのヘルプセンター記事「How your data is used to improve model performance」には、「Services for individuals, such as ChatGPT and Codex:When you use our services for individuals such as ChatGPT and Codex, we may use your content to train our models」と明記されています。オプトアウトの方法としては「ChatGPT under Settings → Data Controls」で「Improve the model for everyone」をオフにするか、プライバシーポータルで「Do not train on my content」を選択する方法が案内されています。OpenAIヘルプセンター「How your data is used to improve model performance」
一方、法人向けのChatGPT Business・ChatGPT Enterprise・ChatGPT for Healthcare・ChatGPT Edu・ChatGPT for Teachers、およびAPI Platformについては、OpenAIの企業向けプライバシーページで「We do not train our models on your data by default」「By default, we do not use your business data for training our models. If you have explicitly opted in to share your data with us(中略)then we may use the shared data to train our models」と説明されています。OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」
なお、オプトアウトを設定していても、回答に対して「いいね/よくないね」のフィードバックボタンを押した場合、そのやり取り全体が学習に使われることがあるとヘルプセンターのデータ管理FAQ(Data Controls FAQ)に記載されています。また「Temporary Chat(一時的なチャット)」を使った会話は履歴に残らず学習にも使われず、30日で削除されるともあります。OpenAIヘルプセンター「Data Controls FAQ」
ChatGPTの有料版と無料版でできることの違いを整理したい場合はChatGPT通常利用と無料版の10の違いも参考にしてください。
Claude(Anthropic)の学習利用とオプトアウト設定
Anthropicの公式ヘルプセンターによると、Claude Free・Pro・Maxなどの個人向けプランでは、利用者が明示的に許可した場合や、安全性レビューの対象になった場合などに会話データがモデル学習に使われることがあるとされている。
Anthropicのプライバシーセンター記事「Is my data used for model training?」(consumer向け)には、「This article is about our consumer products such as Claude Free, Pro, Max and when accounts from those plans use Claude Code」としたうえで、「We will use your chats and coding sessions(中略)if: You choose to allow us to use your chats and coding sessions to improve Claude」「Your conversations are flagged for safety review」「By otherwise explicitly opting in to training」の3つのケースが挙げられています。Anthropic Privacy Center「Is my data used for model training?」(consumer)
同じ記事では「Incognito chats」について、「Your Incognito chats are not used to improve Claude, even if you have enabled Model Improvement in your Privacy Settings」とも説明されています。
商用向けのClaude for WorkやAnthropic API、Claude Govについては、別のプライバシーセンター記事「Is my conversation data used for model training?」で「By default, we will not use your inputs or outputs from our commercial products(中略)to train our models」「If you explicitly report feedback or bugs to us(中略)or otherwise choose to allow us to use your data, then we may use your chats and coding sessions to train our models」と説明されています。Anthropic Privacy Center「Is my conversation data used for model training?」(commercial)
Claudeをチームで使う場合の機能についてはClaudeのプロジェクト機能の使い方、初めてClaudeを触る場合はClaudeの使い方|始め方から最新機能までもあわせて確認してみてください。
Gemini(Google)の学習利用とオプトアウト設定
Googleの公式ヘルプによると、Geminiアプリ(個人向けの対話アプリ)は人によるレビューの対象になり得る一方、Gemini APIは支払い(Cloud Billingアカウントの紐付け)の有無で学習利用の扱いが分かれるとされている。
Gemini Apps(Web・アプリ版のGemini)のプライバシーハブには「Human reviewers(including trained reviewers from our service providers)review some of the data we collect for these purposes. Please don’t enter confidential information that you wouldn’t want a reviewer to see or Google to use to improve our services」と記載されています。Google「Gemini Apps Privacy Hub」
同ページでは「Keep Activity」という設定について「control whether your data is used to improve Google AI」と説明されていますが、続けて「Even if your Keep Activity setting is off, Google still uses your chats to respond to you and help protect Google, our users, and the public, including with help from human reviewers」とも書かれています。つまりKeep Activityをオフにしても、応答生成やセキュリティ目的での利用、人によるレビューの可能性そのものが完全になくなるとは説明されていません。この点はChatGPTやClaudeの「学習だけをオフにするトグル」とは性質が異なるため、同一視しない方が安全です。
一方、開発者向けのGemini API利用規約では、支払いを伴わない「Unpaid Services」(Google AI Studioや無償枠のGemini API)について「Google uses the content you submit to the Services and any generated responses to provide, improve, and develop Google products and services」「human reviewers may read, annotate, and process your API input and output」と説明されています。対して、Cloud Billingアカウントが紐づいた「Paid Services」については「Google doesn’t use your prompts(中略)or responses to improve our products」と明記されています。Google AI for Developers「Gemini API Additional Terms of Service」
Googleの生成AIリサーチ機能を業務で使う方法はGoogle AI Deep Researchの使い方でも解説しています。
入力してよい情報と避ける情報の判定表
判定表とは、業務でよくある入力内容を区分ごとに整理し、入力してよい例と避けるべき例を対比して示した早見表を指す。
ここまでの内容をふまえ、日々の業務でよくある入力内容を6つの区分に分けて整理しました。あくまで一般的な目安であり、自社の契約内容や業界特有の規制(医療・金融など)がある場合はそちらを優先してください。
| 区分 | 入力してよい情報の例 | 入力を避けるべき情報の例 |
|---|---|---|
| 一般的な文章・アイデア | 業界動向についての一般的な質問、公開されている情報のリライト、架空の設定でのブレインストーミング | 実在する会社名・個人名を明記したうえでの内部情報の要約依頼 |
| 顧客・取引先情報 | 「A社」のように匿名化・仮名化した傾向分析の相談 | 実名の顧客リスト、連絡先、契約金額、取引条件そのものの貼り付け |
| 従業員・人事情報 | 一般的な人事制度や評価制度の考え方についての質問 | 特定の従業員の評価コメント、給与、健康状態、懲戒歴などの要配慮個人情報を含む情報 |
| 技術・製品情報 | 一般に公開されている技術の使い方や比較についての質問 | 未公開の設計図、ソースコードの中身、特許出願前のアイデアの詳細 |
| 契約・法務情報 | 一般的な契約書のひな形や条項の考え方についての質問 | 締結済み契約書の具体的な条項・金額・当事者名をそのまま貼り付ける行為 |
| 認証情報 | 該当なし(原則としてどのような形でも入力を避ける) | APIキー、パスワード、社内システムのログイン情報、二段階認証コード |
この表はあくまで仮の例による整理です。実際の業務では、担当者ごとに判断がぶれやすい「顧客情報」「人事情報」の欄を重点的にすり合わせておくと、後述する社内ルールの土台として機能しやすくなります。
業務ツールと連携させるときに増えるリスク
生成AIの業務連携とは、ChatGPTやClaudeなどをSlack・Notion・Google Driveといった社内ツールや外部のプラグイン・コネクタと接続し、AIがそれらのデータを参照・操作できるようにする仕組みを指す。
Googleの「Gemini Apps Privacy Hub」には、Connected Apps(連携アプリ)について「Gemini saves and uses info from Connected Apps according to this notice」「If you use Gemini Apps to interact with third-party services, they process your data according to their own privacy policies」と記載されています。Google「Gemini Apps Privacy Hub」
つまり、生成AI本体の学習利用設定をきちんとオフにしていても、連携させた外部サービス側は「そのサービス自身のプライバシーポリシー」に従ってデータを扱います。連携先を増やすほど、確認すべきプライバシーポリシーの数も増えるということです。業務効率化のために連携機能を使う場合は、生成AI側の設定だけでなく、連携先ツール1つひとつの権限範囲(読み取りだけか、書き込みや削除もできるか)を確認する工程を、後述する社内ルールに含めておくことをおすすめします。
ChatGPTを業務システムと連携させる際の基本的な手順はChatGPT業務連携の基礎ガイドで解説しているので、連携の可否を検討する際に参照してください。本記事ではあくまで「連携によって増えるデータの経路」というリスクの観点に絞って説明しています。
サービス・プランを選ぶときに確認すべきポイント
プラン選定時の確認ポイントとは、料金やできることの比較だけでなく、学習利用のデフォルト設定・管理者による一括制御の可否・データ保持期間の3点を指す。
ここまで見てきたように、同じ会社が提供するサービスでも、個人向けプランと法人向けプランでは学習利用の既定値が異なります。プラン選定時には、次の3点を確認すると比較がしやすくなります。
| 確認ポイント | ChatGPT | Claude | Gemini |
|---|---|---|---|
| 個人向けプランの学習利用の既定 | 既定でオン(オプトアウト操作が必要)とヘルプセンターに記載 | 既定でオフ、利用者が許可した場合や安全性レビュー対象時に使われるとプライバシーセンターに記載 | チャットは人によるレビューの対象になり得ると明記 |
| 法人・商用向けプランの学習利用の既定 | 既定でオフ、明示的なオプトインが必要と記載 | 既定でオフ、明示的な許可・フィードバック提供時のみと記載 | API利用時は支払いの有無(Paid/Unpaid Services)で分かれる |
| 管理者による一括制御 | Team・Enterprise・Eduでデータ管理設定を提供 | Team・Enterpriseなど管理者向け設定の詳細は本記事では確認できていない | Google Workspace管理コンソール側の設定が別途必要(本記事では未検証) |
この比較表のうち、学習利用の既定に関する内容は本記事の各見出しで引用した公式ページの文言にもとづいています。管理者による一括制御の欄のうち、Claudeの管理者向け設定とGoogle Workspace管理者向けの詳細設定については本記事で一次情報を確認しきれていないため、実際に導入する場合はそれぞれの公式管理コンソール・ヘルプページの説明を別途確認してください。
中小企業がChatGPTを業務効率化に使った実例は中小企業のChatGPT業務効率化事例15選でも紹介しているので、プラン選定と合わせて参考にしてみてください。
社内ルールに書くべき項目とチェックリスト
社内ルールとは、誰がどのサービスをどこまで使ってよいかを明文化し、入力禁止情報・確認手順・報告フローをチーム全員が参照できる形にまとめた文書を指す。
情報システム部門や法務部門を持たない中小企業・個人事業主でも、次の7項目を1枚にまとめるところから始められます。
| チェック項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 利用してよいサービス・プランの指定 | 会社として契約・許可しているサービス名とプラン(例:ChatGPT Business、Claude for Workなど)を明記する |
| 入力禁止情報の一覧 | 顧客の個人情報、要配慮個人情報、未公開の契約条件、認証情報など、入力してはいけない情報を具体的に列挙する |
| 学習利用・オプトアウト設定の確認手順 | 利用するサービスの管理画面のどこで学習利用設定を確認・変更できるかを、担当者が迷わないよう手順化する |
| 出力結果を社外に出す前の確認フロー | 生成された文章・画像をそのまま公開・送付する前に、事実確認と著作権確認を誰が行うかを決める |
| 利用ログ・履歴の保存方針 | 誰がどの業務で生成AIを使ったかを、どの範囲・期間で記録しておくかを決める |
| 情報漏えいが疑われた場合の報告先 | 入力してはいけない情報を誤って入力してしまった場合、誰に・どの経路で報告するかを事前に決めておく |
| 定期的な見直しのタイミング | 各社の仕様変更に合わせてルールを見直す頻度(例:半期に1回)をあらかじめ決めておく |
すべての項目を一度に完成させる必要はありません。まずは「入力禁止情報の一覧」と「報告先」の2項目だけでも明文化し、残りは運用しながら少しずつ言葉にしていく進め方でも十分に機能します。
情報漏えいが疑われたときの初動対応
初動対応とは、機密情報や個人情報を誤って生成AIに入力してしまったことに気づいた直後に取るべき行動の順序を指す。
誤って機密情報を入力してしまったことに気づいた場合、まず行うべきは「その事実を隠さず、社内ルールで決めた報告先にすぐ共有すること」です。時間が経つほど、その情報が学習データに取り込まれる可能性のある期間や、対応の選択肢が狭まっていきます。
次に、利用しているサービスの管理画面やヘルプセンターで、該当の会話履歴を削除できるか、学習利用からの除外を申請できるかを確認します。例えばOpenAIの企業向けプライバシーページには、ChatGPT Enterprise・Edu・for Healthcareについて「Any deleted conversations are removed from our systems within 30 days, unless we are legally required to retain them」と記載されています。OpenAI「Enterprise privacy at OpenAI」
ただし、いずれの公式ページも「学習にすでに使われたデータを完全に取り消せる」とまでは説明していません。だからこそ、入力してしまった後の対応よりも、入力前の判定表とルールで防ぐことの方が現実的な対策になります。個人情報が関わる漏えいで、法令上の対応(本人への通知や委員会への報告など)が必要かどうかを判断する場合は、個人情報保護委員会の公表資料や専門家への確認をおすすめします。
中小企業・個人事業主が今日からできる3つの行動
今日からできる行動とは、専門部署がない小規模な組織でも、外部の専門家に依頼せずにその日のうちに着手できる具体的な対策を指す。
1つ目は、この記事の判定表を自社の業務に合わせて書き換えることです。すべての区分をゼロから考えるのではなく、本記事の表をたたき台にして「自社特有の情報」(顧客の個人情報の種類、業界特有の機密情報など)を1〜2行追加するだけでも実用的なルールになります。
2つ目は、いま使っているサービスの学習利用設定を、この記事で紹介した確認先(ChatGPTならSettings→Data Controls、Claudeならプライバシー設定、Geminiならアクティビティの管理画面)から実際に開いて確認することです。設定画面の項目名は各社のアップデートで変わることがあるため、記載どおりの名称が見つからない場合は、各社ヘルプセンター内の検索機能で「Data Controls」「Model Improvement」「Keep Activity」といったキーワードを探してみてください。
3つ目は、社内ルールのチェック項目表のうち「入力禁止情報の一覧」と「報告先」の2項目だけを、まず口頭ではなくテキストやチャットツールのピン留めメッセージとして残すことです。文書の完成度よりも、全員が同じ内容を参照できる状態を作ることを優先してください。
まとめ
生成AIを業務で使う際の情報漏えい対策は、特別なツールを導入しなくても、次の3つの手順で今日から始められます。(1)入力してよい情報とNGな情報の線引きを判定表として言葉にする、(2)ChatGPT・Claude・Geminiなど利用しているサービスの学習利用・オプトアウト設定を公式ページで確認する、(3)それらをチェックリストとして社内ルールにまとめ、チームで共有する。
各社の設定名称や既定値は今後もアップデートされる可能性があります。本記事の記載はあくまで2026年9月14日時点で取得した公式ページの内容にもとづくものなので、実際に設定を変更する際は、その時点の公式ページで最新の条件を確認してください。法令に関わる判断が必要な場合も、個人情報保護委員会などの公表資料や専門家への確認を挟むことをおすすめします。
より広い視点で生成AI利用の注意点を整理したい場合はChatGPTの仕事活用術15選と知らないと損する7つの注意点も、税務など特定分野での入力リスクを確認したい場合はChatGPTに確定申告の相談は可能?税理士法リスクと安全な活用術もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
- Q1. 無料プランのChatGPTやGeminiに入力した内容は、そのまま学習に使われますか。
- サービスやプランによって扱いが異なります。OpenAIのヘルプセンターによると、ChatGPTやCodexなど個人向けサービスでは既定で学習に使われる可能性があり、Settings→Data Controlsなどでオプトアウトできるとされています。一方Geminiアプリについては、Googleの公式ヘルプで人によるレビューの対象になり得ると説明されています。最新の条件は各社の公式ページでご確認ください。
- Q2. 会社で契約しているのが法人向けプラン(Business・Enterprise・Team等)なら安心ですか。
- OpenAIはChatGPT Business・Enterprise・Edu・APIなどについて既定で学習に使わないと説明しており、AnthropicもClaude for WorkやAPIについて既定で学習に使わないとしています。ただし、フィードバック機能を使った場合や明示的にオプトインした場合は学習に使われる可能性があると各社とも明記しているため、管理者向け設定もあわせて確認することをおすすめします。
- Q3. 個人情報を含むプロンプトを入力すること自体が違法ですか。
- 個人情報保護委員会は、個人情報を含むプロンプトを入力する場合には利用目的の範囲内であることを確認すること、また同意なく個人データを含むプロンプトを入力し目的外に扱われる場合は個人情報保護法違反となる可能性があると注意喚起しています。違法性の有無は個別の事実関係によって異なるため、最終的な判断は同委員会の公表資料や専門家にご確認ください。
- Q4. 「要配慮個人情報」とは具体的に何を指しますか。
- 人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴など、本人に対する不当な差別や偏見が生じないよう取り扱いに特に配慮を要する情報を指します。個人情報保護委員会はOpenAIに対しても、本人の同意なく要配慮個人情報を取得しないことなどを求める注意喚起を行っています。
- Q5. 社内ルールは誰が作ればいいですか。
- 法律上の決まりはありません。情報システム部門や法務部門がない中小企業・個人事業主であれば、本記事のチェック項目表を土台に経営者自身がまず1枚のルールをまとめ、使うメンバー全員に共有するところから始める方法があります。
- Q6. 過去に入力してしまった機密情報を、後から取り消すことはできますか。
- サービスによって対応が異なります。OpenAIは削除された会話が原則30日以内にシステムから削除されるとしていますが、Googleのジェミニアプリは人によるレビュー済みのデータについて活動削除の対象外とし、最大3年保持されるとしています。学習にすでに使われたデータの取り消しまで保証されているとは各社とも明言していないため、入力前の判断がより重要になります。

