「AI法ができた」というニュースを見て、AI事業者ガイドラインと同じものだと思っていないでしょうか。結論から言うと、この二つは性格がまったく違います。AI法は令和7年に成立・施行された法律そのものであり、AI事業者ガイドラインは総務省と経済産業省がまとめた自主的な取組のための指針です。名前が似ているために混同されがちですが、所管も位置づけも別物です。
この記事では、内閣府が公開しているAI法の概要と、法律にもとづいて作られたAI戦略本部・人工知能基本計画・適正性確保に関する指針の中身を、公式ページと公開資料の文言にもとづいて整理します。そのうえで、AI×SNSや副業でAIを使う個人・小規模事業者が、この法律とどう関わるのかを具体的に見ていきます。なお本記事の記載は、2026年9月25日時点で取得した内閣府の公開ページおよび公開資料の内容にもとづいています。基本計画や指針は今後も見直される予定のため、実務で参照する際はその時点の公式ページをご確認ください。
AI法とは|正式名称・目的・成立から全面施行までの流れ
AI法とは、人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律の略称で、AIのイノベーションを促進しつつリスクに対応するために令和7年に成立した法律を指す。
内閣府の「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律(AI法)」のページによると、「生成AIをはじめとするAI技術の発展は、国民生活の向上及び国民経済の発展に寄与する一方、国内のAI開発・活用は遅れており、また、多くの国民がAIにより発生するリスクに不安を抱えている状況」だとしたうえで、「AIのイノベーションを促進しつつ、リスクに対応するため、令和7年6月4日にAI法が公布・一部施行され、9月1日にはAI戦略本部の設置に係る規定等も含め、全面施行されました」と説明されています。
内閣府が公開する「AI法の概要」(PDF)には、成立が令和7年5月28日、一部施行が令和7年6月4日、全面施行が令和7年9月1日と時系列で示されています。同資料は法律の目的を「国民生活の向上、国民経済の発展」と整理しており、既存の刑法や個別の業法等に加えて、この二つを実現するために新たな法律が必要だったという立て付けになっています。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 令和7年5月28日 | AI法が成立 |
| 令和7年6月4日 | AI法が公布・一部施行 |
| 令和7年9月1日 | AI戦略本部の設置に係る規定等を含め全面施行 |
| 令和7年12月19日 | AI戦略本部が「適正性確保に関する指針」を本部決定 |
| 令和7年12月23日 | 人工知能基本計画(初版)を閣議決定 |
| 令和8年7月14日 | 第Ⅱ期人工知能基本計画を閣議決定 |
法文全文はe-Gov法令検索の該当ページで確認できます。以降の章では、この法律が作った三つの仕組み(AI戦略本部・人工知能基本計画・適正性確保に関する指針)を順番に見ていきます。
なぜ今AI法が必要とされたのか|内閣府が示す二つの理由
法律の必要性とは、AI法の概要資料が示す制定の背景を指し、日本のAI開発・活用の遅れと、AIのリスクに対する国民の不安という二つの課題への対応がその内容にあたる。
「AI法の概要」は、法律の必要性として「日本のAI開発・活用は遅れている」ことと「多くの国民がAIに対して不安」を抱えていることの二点を挙げています。そのうえで「イノベーションを促進しつつ、リスクに対応するため、既存の刑法や個別の業法等に加え、新たな法律が必要」だったと説明しています。個人情報保護法や著作権法のように特定の権利を守る法律とは異なり、AI法は研究開発と活用そのものを推進する立場から作られた法律だという点が、まず押さえておきたい前提です。
同資料は法律の狙いを「世界のモデルとなる法制度を構築」し、「国際指針に則り、イノベーション促進とリスク対応を両立。最もAIを開発・活用しやすい国へ」と表現しています。規制で縛る発想ではなく、推進と対応を両立させる制度を作るという方向性が、この後に見る基本理念や基本的施策にも一貫して表れています。
仮の例:SNS運用でAIを使っている個人事業主が、この章の内容を自分向けに要約したメモです。「AI法は『AIを禁止・制限する法律』ではなく『AIの研究開発と活用を進めるための法律』。自分の仕事に直接の規制がかかるわけではないが、政府がAIの安全な普及をどう進めようとしているかの土台になる。指針や基本計画の内容は、今後SNSプラットフォーム側のAI関連ルールにも影響しうるので、年に一度は内閣府のページを確認する。」
AI事業者ガイドラインとの違い|「法律」と「指針」を混同しない
AI事業者ガイドラインとは、総務省と経済産業省が共同で公表している文書で、AIの開発・提供・利用を担う事業者に自主的な取組を促す非拘束的な指針を指し、AI法とは所管も位置づけも異なる。
混同されやすいのがこの二つの関係です。AI法は内閣府が所管する法律そのもので、令和7年に成立・施行されました。一方、AI事業者ガイドラインとは|業務で生成AIを使う前に確認する項目で扱っているとおり、AI事業者ガイドラインは総務省と経済産業省が公表している指針で、義務を課すものではないと公式資料に明記されています。名称に「AI」と「ガイドライン」が入っている点は似ていますが、法律と指針という根本的な違いがあります。
内閣府が公開する「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」のページには、「人工知能に関する各府省庁等のガイドライン等一覧」が掲載されており、AI事業者ガイドラインの所管が総務省・経済産業省であることが、策定時期とあわせて示されています。この一覧には、個人情報保護委員会や文化庁など、他の省庁が出しているAI関連の指針も並んでおり、AI法・AI戦略本部が定める指針とは別に、各省庁が個別分野の指針を出している構図が見えてきます。
| 比較の観点 | AI法 | AI事業者ガイドライン |
|---|---|---|
| 性格 | 法律 | 指針(ソフトロー) |
| 所管 | 内閣府 | 総務省、経済産業省 |
| 根拠・位置づけ | 国会で成立した法律本文 | AI法とは別に総務省・経済産業省が策定 |
| 対象 | 研究開発機関・事業者・国民など全ての主体 | AIの開発・提供・利用を担う事業者 |
| 公表・施行時期 | 令和7年5月28日成立、9月1日全面施行 | 第1.2版は令和8年3月31日公表 |
実務での使い分けとしては、AI法に基づく指針や基本計画は国全体の方針を示すもの、AI事業者ガイドラインは事業者が自社のAI活用ルールを作るときの実務的な手引き、と分けて理解すると整理しやすくなります。両者は矛盾するものではなく、AI法という大きな枠組みの下に、各府省庁の個別ガイドラインが並んでいる関係にあります。
AI戦略本部とは|設置根拠と本部長・構成員
AI戦略本部とは、AI法にもとづいて設置された政府の会議体で、内閣総理大臣を本部長とし、全ての国務大臣を本部員として構成される。
内閣府の「人工知能戦略本部について」のページによると、AI戦略本部は「AI法」に基づいて設置されています。同ページには、本部長が高市早苗(内閣総理大臣)、副本部長が木原稔(内閣官房長官)と小野田紀美(内閣府特命担当大臣(人工知能戦略))、本部員が「本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣」と記載されています。政府全体でAI政策を進める体制になっていることが、この構成からもわかります。
「AI法の概要」によれば、AI戦略本部の役割として「関係行政機関等に対して必要な協力を求める」ことが挙げられています。特定の省庁だけでAI政策を決めるのではなく、内閣総理大臣を本部長とする本部が全体を統括し、必要に応じて各省庁に協力を求める仕組みです。次の章で見る人工知能基本計画も、このAI戦略本部が決定してきたものです。
人工知能基本計画とは|第Ⅱ期計画の四本柱
人工知能基本計画とは、AI法にもとづきAI戦略本部が決定する、研究開発・活用の推進のために政府が実施すべき施策の基本的な方針を示す計画を指す。
「AI法の概要」は、AI基本計画を「研究開発・活用の推進のために政府が実施すべき施策の基本的な方針等」と説明しています。内閣府の「人工知能基本計画」のページによると、初版は令和7年12月23日に閣議決定され、その後改定された「第Ⅱ期人工知能基本計画」が令和8年7月14日に閣議決定されています。2026年9月25日時点で最新の基本計画はこの第Ⅱ期版です。
内閣府が公表した「第Ⅱ期人工知能基本計画(概要)」(PDF)には、副題として「日本AX、より強く、より豊かに」が掲げられ、四つの柱が示されています。四本柱は、AI利活用の加速的推進(AIを使う)、AI開発力の戦略的強化(AIを創る)、AIガバナンスの主導(AIの信頼性を高める)、AI社会に向けた継続的変革(AIと協働する)です。
| 柱 | キャッチフレーズ | 主な内容 |
|---|---|---|
| 1. AI利活用の加速的推進 | AIを使う | エージェント型AI等の積極適用、政府における率先導入 |
| 2. AI開発力の戦略的強化 | AIを創る | AI実装能力を高め、「AI主権」を確保する |
| 3. AIガバナンスの主導 | AIの信頼性を高める | AIエコシステムにおける「信頼」の構築で世界をリード |
| 4. AI社会に向けた継続的変革 | AIと協働する | 人が意思決定への責任を持ちながら、AXで日本を駆動 |
同資料には「本基本計画は当面毎年変更、適切なベンチマーク(KPI等)を設定しモニタリング」する方針も明記されています。基本計画は一度作って終わりではなく、毎年見直される前提で運用されているという点は、AI法まわりの情報を追ううえで覚えておく価値があります。四本柱のうち3番目「AIガバナンスの主導」には、「AI法第16条に基づく調査研究等をより機動的に運用」し「AI法を含めた制度等を能動的かつ不断に見直す」との記載もあり、AI法自体も基本計画のサイクルの中で見直され続ける設計になっています。
適正性確保に関する指針とは|十の要素とリスクベースの考え方
適正性確保に関する指針とは、AI法第13条にもとづきAI戦略本部が令和7年12月19日に決定した指針で、AIに関わる全ての主体に自主的かつ能動的な取組を促すものを指す。
内閣府の指針ページによると、「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針」は令和7年12月19日に本部決定されています。内閣府が公表する「人工知能関連技術の研究開発及び活用の適正性確保に関する指針の概要」(PDF)には、本指針の位置づけとして「AI法第13条に基づき、信頼できるAIの実現に向けて、国際的な規範の趣旨に即して策定」し、「全ての主体におけるAIの研究開発及び活用の適正な実施に係る自主的かつ能動的な取組を促す」ことが示されています。AI事業者ガイドラインと似た「指針」という形式ですが、根拠となる条文を持つ法定の指針である点が異なります。
同資料は適正性確保に必要となる基本的な考え方として、四つのアプローチを挙げています。リスクベースでのアプローチ、ステークホルダーの積極的な関与、一気通貫でのAIガバナンスの構築、アジャイル(柔軟かつ迅速)な対応の四つです。そのうえで、適正性確保に必要となる主な要素として十項目を列挙しています。
| 要素 | 指針が示す位置づけ |
|---|---|
| 人間中心 | AIに関わる全ての主体が踏まえるべき基本の要素 |
| 公平性 | 同上 |
| 安全性 | 同上 |
| 透明性 | 同上 |
| アカウンタビリティ | 同上 |
| セキュリティ | 同上 |
| プライバシー・個人情報 | 同上 |
| 公正競争 | 同上 |
| AIリテラシー | 同上 |
| イノベーション | 同上 |
指針は、AIに関わる主体を「国」「地方公共団体」「研究開発機関」「活用事業者」「国民」の五つに整理し、それぞれが特に取り組むべき事項を示しています。次の章では、このうち国民と活用事業者・研究開発機関に求められる取組を具体的に見ていきます。
国民に求められる取組|AI×SNS・副業で使う個人が読む部分
指針における国民の取組とは、人間中心の原則に基づいてAIの責任ある利用者としての自覚を持って行動し、AIリテラシーを能動的に身に付けることを指す。
AI×SNSや副業でAIを日常的に使っている個人にとって直接関係が深いのが、この「国民」に整理された部分です。適正性確保に関する指針の概要(PDF)は、国民が特に取り組むべき事項として、「人間中心の原則に基づき、倫理、法令、人権等の様々な課題を理解しAIの責任ある利用者としての自覚を持って行動」することと、「AIリテラシーを能動的に身に付け、AIを適切に利用」することの二つを挙げています。
抽象的な表現ですが、SNS投稿の作成やAI副業の文脈に置き換えると、AIが出した情報をそのまま信じずに一次情報で確認すること、著作権や個人情報にかかわる入力を避けること、AIを使っていることを隠す必要がある場面では表示ルールを守ることなどが、この「責任ある利用者としての自覚」に該当します。AIの出力をファクトチェックする具体的な手順はAIハルシネーション対策|仕事で使う前のファクトチェック7手順と判断基準に、SNS投稿でのステルスマーケティング規制の確認事項はAI×SNS運用のステマ規制対応|景品表示法で確認すべき表示ルールにまとめています。
仮の例:AIでSNS投稿を作成している個人が、月初に自分向けに書き出す確認リストです。「1. 今月AIで作った投稿のうち、数値や固有名詞を含むものは一次情報で裏取りしたか。2. 個人情報や他人の著作物を含む文章・画像を入力していないか。3. 広告・宣伝の実態がある投稿にPRなどの表示を付けているか。4. 新しく使い始めたAIサービスの利用規約とデータの扱いを確認したか。この4点を月初にチェックし、日付とともにメモに残す。」
活用事業者・研究開発機関に求められる取組
指針における活用事業者・研究開発機関の取組とは、AIガバナンスを構築・運用し、ステークホルダーとの信頼関係構築に向けて透明性を確保し、技術を用いて十分な安全性を確保することを指す。
個人でAI×SNS活用をしているだけでなく、法人としてAIを使ったサービスや業務を展開している場合は、「活用事業者」「研究開発機関」に整理された取組も確認しておく必要があります。指針の概要は、活用事業者・研究開発機関が特に取り組むべき事項として、「AIガバナンスを構築・運用」すること、「ステークホルダーとの信頼関係の構築に向けて透明性を確保」すること、「技術を用いて十分な安全性を確保」すること、「データの重要性を踏まえデータ保有者等のステークホルダーへ配慮」することの四点を挙げています。
この四点は、総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインが示す「共通の指針」10項目とも重なる部分が多く、実務としては両方を別々に読み込むというより、AI事業者ガイドラインの本編・別添を実務のチェックリストとして使い、AI法・指針は国としての方針を確認する材料として位置づけると効率的です。社内でAI活用ルールを整えるときの進め方は、AI事業者ガイドラインとは|業務で生成AIを使う前に確認する項目で扱っています。導入したAIツールの効果を継続的に評価する手順は生成AIの導入効果を社内で評価する方法|記録する項目と1か月の検証手順で扱っています。ガバナンスを構築するときは、この二つをあわせて参照すると重複作業が減ります。
罰則はあるのか|内閣府の概要に示された基本的施策
AI法の基本的施策とは、研究開発の推進や人材確保、指針の整備、情報収集・調査、事業者等への指導・助言・情報提供など、法律の目的を実現するために内閣府の概要資料が列挙している具体的な取組を指す。
「AIに違反すると罰金や懲役があるのか」という疑問を持つ人もいるはずです。内閣府の「AI法の概要」(PDF)は、法律の概要として「基本的施策」を列挙しています。内容は、研究開発の推進や施設等の整備・共用の促進、人材確保・教育振興、国際的な規範策定への参画、適正性のための国際規範に即した指針の整備、情報収集・権利利益を侵害する事案の分析・対策検討・調査、そして「事業者等への指導・助言・情報提供」です。
この資料の全文を確認した限り、「罰則」「罰金」「懲役」「命令」「課徴金」といった語は見当たりませんでした。列挙されている基本的施策のうち、事業者に対して直接関わる項目は「指導・助言・情報提供」であり、違反への制裁を定める条文が概要資料の前面に出ているわけではありません。ただし、これは内閣府が公表した概要資料を確認した結果であり、法律の個別条文をすべて検証したものではないため、正確な条文の有無を確かめたい場合はe-Gov法令検索の法文全文で確認してください。
同資料の「責務」の項目には、「国、地方公共団体、研究開発機関、事業者、国民の責務、関係者間の連携強化」とあわせて、「事業者は国等の施策に協力しなければならない」と明記されています。事業者には施策への協力義務が課されている一方、国民の責務は「関係者間の連携強化」という表現にとどまっており、個人利用者に直接の法的義務を課す条文が前面に出ているわけではない、という整理になります。
改正個人情報保護法・AI事業者ガイドラインとの役割分担
役割分担とは、個人情報や著作権のように違反すると法的責任が生じうる法律と、AI事業者ガイドラインのように自主的な取組を促す指針、そしてAI法・適正性確保に関する指針という国全体の方針を、それぞれ別の役割として理解することを指す。
AIを使ううえで関係してくる公的な文書は、AI法と適正性確保に関する指針だけではありません。生成AIの情報漏えい対策|入力NG情報とオプトアウト設定・社内ルールで扱っている個人情報保護法や、AIイラストの著作権と商用利用|安全に使うための7つのルールで扱っている著作権法は、違反すると法的責任が生じうる法律です。これらは個人情報保護委員会や文化庁が所管しており、AI法とは別の法律・指針体系にあります。
個人情報保護委員会が公表する「令和8年 改正個人情報保護法について」のページによると、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」は令和8年7月10日に国会で可決・成立し、令和8年7月17日に公布されています。同ページには「円滑な施行に向け、引き続き、政令、規則、ガイドライン等の検討を行ってまいります」と記載されており、施行に向けた細目の整備が続いている段階です。AI法とは別の法律が並行して動いている点も、あわせて押さえておくと理解が整理しやすくなります。
| 文書 | 役割 | 所管 |
|---|---|---|
| AI法 | 研究開発と活用の推進を目的とする法律。AI戦略本部・基本計画・適正性確保の指針の根拠 | 内閣府 |
| 適正性確保に関する指針 | AI法第13条に基づく、全主体向けの自主的取組の指針 | 内閣府(AI戦略本部) |
| AI事業者ガイドライン | 事業者向けの実務的な取組指針。義務を課すものではないと明記 | 総務省、経済産業省 |
| 個人情報保護法 | 個人情報の取扱いに関する法律上の義務 | 個人情報保護委員会 |
| 著作権法 | 著作物の利用に関する法律上の義務 | 文化庁(制度所管) |
AI戦略本部の開催実績|第1回から第5回で何が決まってきたか
開催実績とは、AI戦略本部がこれまでに開いた会議の記録を指し、開催日と議事が内閣府の掲載ページで公開されている。
内閣府の「人工知能戦略本部 開催状況」のページによると、AI戦略本部は2026年9月25日時点で五回開催されています。第1回が令和7年9月12日、第2回が令和7年11月21日(持ち回り開催)、第3回が令和7年12月19日、第4回が令和8年6月19日(持ち回り開催)、第5回が令和8年7月10日です。
各回の議事次第を確認すると、第3回では「AI法に基づく基本計画(案)及び指針(案)について」が議題となり、ここで基本計画と適正性確保に関する指針の案が示されています。第5回では「AI法に基づく基本計画(案)について」と「バーティカルAI領域別戦略 中間とりまとめについて」が議題になっており、基本計画の改定作業に加えて、医療・金融など分野別のAI戦略も並行して検討されていることがわかります。
| 回 | 開催日 | 主な議事 |
|---|---|---|
| 第1回 | 令和7年9月12日 | 議事次第・配付資料あり |
| 第2回 | 令和7年11月21日 | 持ち回り開催 |
| 第3回 | 令和7年12月19日 | AI法に基づく基本計画(案)及び指針(案)について |
| 第4回 | 令和8年6月19日 | 持ち回り開催 |
| 第5回 | 令和8年7月10日 | AI法に基づく基本計画(案)について、バーティカルAI領域別戦略中間とりまとめについて |
開催記録を追うと、基本計画と指針は「案」の段階から本部で議論され、その後正式に決定されるという流れをたどっていることがわかります。次にAI戦略本部が開かれるタイミングで、AI法や関連の指針に新しい動きがないかを確認する習慣をつけておくと、情報の更新を追いやすくなります。
今後のスケジュール|基本計画の毎年見直しと指針の更新
アジャイルな対応とは、基本計画や指針を一度決定して終わりにせず、状況の変化に合わせて柔軟かつ迅速に見直し続けるという、AI法まわりの制度に共通する運用方針を指す。
この記事で見てきたとおり、人工知能基本計画は初版が令和7年12月23日、改定版の第Ⅱ期計画が令和8年7月14日に閣議決定されており、すでに一度改定されています。第Ⅱ期計画の概要には「本基本計画は当面毎年変更」する方針が明記されているため、今後も年単位で内容が更新されていく見込みです。
適正性確保に関する指針についても、四つのアプローチの一つに「アジャイル(柔軟かつ迅速)な対応」が掲げられており、基本計画と同様に固定された文書ではなく、状況に応じて見直される前提で運用されています。第Ⅱ期基本計画には「人工知能戦略本部にAI関連の知見を集約し、AI関連の制度や指針等の点検・見直しを促す仕組みを構築」するとの記載もあり、AI戦略本部が今後もAI法・指針・基本計画の見直しを継続的に主導していく体制になっています。
AI×SNSや副業でAIを使う立場からすると、細かい制度改定をすべて追いかける必要はありませんが、AI戦略本部の開催や基本計画の改定というタイミングで内閣府のページを見に行く習慣があると、大きな方針転換を見逃さずに済みます。
個人・フリーランスが今日から確認できる三つのこと
確認できることとは、AI×SNSや副業でAIを使う個人・フリーランスが、この記事の内容を踏まえてすぐに実行できる具体的な行動を指す。
ここまでの内容を踏まえ、個人・フリーランスの立場で今日から確認できることを三つに整理します。第一に、自分が使っているAIサービスの利用規約やデータの扱いを、契約している法人向けのものか、個人向けの無料プランかで区別して把握することです。AI法や指針は「事業者」と「国民」を区別して取組を求めているため、自分の使い方がどちらに近いかを意識すると、関係する情報を選びやすくなります。
第二に、AI事業者ガイドラインのような実務指針と、AI法・適正性確保に関する指針のような国の方針とを分けて情報収集することです。日々の業務ルール作りにはAI事業者ガイドラインの別添チェックリストのほうが具体的で使いやすく、制度の大きな方向性を知りたいときはAI法・基本計画のページを見る、という使い分けが効率的です。
第三に、個人情報や著作権のように、AI法とは別に法的責任が生じうる領域については、この記事とは別の一次情報を確認することです。入力してよい情報の線引きは生成AIの情報漏えい対策の記事で、著作物の扱いはAIイラストの著作権と商用利用の記事やAI画像生成の商用利用ガイドで、それぞれ扱っています。AI法の理解だけで個人情報や著作権のリスクまでカバーできるわけではない、という点を最後に強調しておきます。
仮の例:AI×SNS運用を副業にしている人が、四半期に一度見直す確認リストの記入例です。「確認日:2026年9月25日。1. AI法・基本計画・指針のページに更新がないか内閣府サイトで確認した。2. 使っているAIサービスの利用規約に変更がないか確認した。3. 直近の投稿でAI生成コンテンツの表示ルールに漏れがないか見直した。4. 次回確認予定は2026年12月。」
よくある質問(FAQ)
- Q1. AI法はいつから施行されていますか。
- 内閣府のAI法ページによると、令和7年6月4日に公布・一部施行され、AI戦略本部の設置に係る規定等も含めて令和7年9月1日に全面施行されました。成立自体は令和7年5月28日です。
- Q2. AI法とAI事業者ガイドラインは何が違いますか。
- AI法は内閣府が所管する法律そのものです。AI事業者ガイドラインは総務省と経済産業省が公表している指針で、義務を課すものではないと公式資料に明記されています。AI法にもとづく適正性確保に関する指針も指針という形式ですが、AI法第13条という法律上の根拠を持つ点がAI事業者ガイドラインとは異なります。
- Q3. AI法に罰則はありますか。
- 内閣府が公表する「AI法の概要」(PDF)には、基本的施策として研究開発の推進や人材確保、指針の整備、情報収集・調査、事業者等への指導・助言・情報提供が列挙されていますが、「罰則」「罰金」「懲役」「命令」「課徴金」といった語は見当たりませんでした。これは概要資料を確認した結果であり、正確な条文の有無はe-Gov法令検索の法文全文でご確認ください。
- Q4. 個人事業主やフリーランスもAI法の対象になりますか。
- 適正性確保に関する指針は、AIに関わる主体を国・地方公共団体・研究開発機関・活用事業者・国民に整理し、それぞれに取組を求めています。個人事業主やフリーランスがAIを事業で活用している場合は活用事業者に、私的に利用する場合は国民の側に近い整理になります。いずれの立場でも、AIリテラシーを身につけ責任ある利用者として行動することが指針の共通の考え方です。
- Q5. 人工知能基本計画とは何ですか。誰が決めていますか。
- AI法にもとづき、AI戦略本部が決定する政府の施策方針です。初版は令和7年12月23日に閣議決定され、改定版の第Ⅱ期人工知能基本計画が令和8年7月14日に閣議決定されています。AI利活用の加速的推進、AI開発力の戦略的強化、AIガバナンスの主導、AI社会に向けた継続的変革という四本柱で構成されています。
- Q6. 適正性確保に関する指針は何のためにありますか。
- 内閣府の概要資料によると、AI法第13条に基づき、信頼できるAIの実現に向けて国際的な規範の趣旨に即して策定されたもので、全ての主体によるAIの研究開発・活用の適正な実施に係る自主的かつ能動的な取組を促す位置づけです。令和7年12月19日にAI戦略本部が本部決定しました。
- Q7. 今後、AI法や関連の指針・基本計画は変わりますか。
- 変わる可能性があります。第Ⅱ期人工知能基本計画の概要には「本基本計画は当面毎年変更」する方針が明記されており、指針も「アジャイル(柔軟かつ迅速)な対応」を基本アプローチの一つに掲げています。AI戦略本部がこれまでに五回開催され、基本計画がすでに一度改定されていることからも、継続的な見直しが前提になっていることがわかります。
まとめ
AI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)は、令和7年5月28日に成立し、同年9月1日に全面施行された法律です。内閣府が所管し、AI戦略本部の設置根拠であるとともに、人工知能基本計画と適正性確保に関する指針という二つの仕組みの根拠にもなっています。総務省・経済産業省のAI事業者ガイドラインとは所管も位置づけも異なり、AI法は法律、AI事業者ガイドラインは自主的な取組を促す指針という関係です。
AI戦略本部はこれまでに五回開催され、人工知能基本計画はすでに初版から第Ⅱ期計画へと改定されています。適正性確保に関する指針は、国・地方公共団体・研究開発機関・活用事業者・国民という五つの主体それぞれに取組を求めており、AI×SNSや副業でAIを使う個人は「国民」に整理された、責任ある利用者としての自覚とAIリテラシーの向上という部分が特に関係します。基本計画は毎年見直される方針が明記されているため、大きな制度変更のタイミングだけでも内閣府のページを確認する習慣をつけておくと安心です。
最後にもう一度だけ。本記事の記載は2026年9月25日時点で取得した内閣府の公開ページと公開資料にもとづいています。基本計画や指針は今後も改定が見込まれるため、実務の判断に使う際は、その時点の内閣府の公式ページと、必要に応じてe-Gov法令検索の法文全文をあわせてご確認ください。
